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男はつらいよ お帰り 寅さん

kage

2021/01/27 (Wed)

 男はつらいよ お帰り 寅さん

 まず筆者(fanta)は、映画『男はつらいよ』シリーズの大ファンである。であるからして、『男はつらいよ』シリーズを好きではない人、見たことない人、食わず嫌いな人にとっては、不快な文面になるかもしれません。何故なら、筆者(fanta)は、50作目である『男はつらいよ お帰り 寅さん』とシリーズをべた褒めするからだ。

 その前に色事じゃない映画は、映画のブログに書けよというご指摘があれば、その通りなのだが、筆者(fanta)が持ってる映画のブログは、『スパイ映画』中心、それも洋画ですからね。こっちに書かせてください。ダイアリーなんだし。

 こちら、つまり、「メンズヌーディズム」付随の当ブログでの『男の裸というテーマ』を先にクリアーしときましょう。

 『男はつらいよシリーズ』には視覚的に男の裸は、この50年、ほとんどありません。ただ筆者(fanta)が認識している限りでは、満男(吉岡秀隆)が、『ぼくの伯父さん(1989年)』で、乳首出して寝てる姿、吉岡氏、18,9の時の作品。それと、『寅次郎紅の花(1995年)』でハンモックで半裸で寝てる姿。これは狙ってるね、色っぽいです。吉岡氏、24,5の時です。そのくらいかな。キャプチャー探したらありました。下記です。

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 満男ということなら、そういえば、『寅次郎の青春(1992年)』で、ランニングの後、着替えし上半身裸になっていました。
 『ぼくの伯父さん(1989年)』以降、満男シリーズになってから、満男の年代(いわゆるTwinks)のみずみずしさは描かれていたね。これは満男を演じた吉岡秀隆の魅力でもあると思う。
 『寅次郎の縁談(1993年)』で、看護婦の亜矢ちゃんとのキスシーンなんて色っぽかった。

 一応、原作、脚本、監督の山田洋次のLGBT見識について述べておきます。少なくとも山田は、『ぼくの伯父さん(1989年)』まで、全く、LGBT見識は無いね。『ぼくの伯父さん(1989年)』におけるゲイのライダー(当時はホモ)の描き方なんて酷かった。
 その後、ピーコをファッションアドバイザーとしてスタッフに加えたり、(『拝啓車寅次郎様(1994年)』)、最新作、『お帰り 寅さん(2019年)』では、オネエのバースタッフの役を作ったりしてるが、オーバーアクトで、どうなんでしょうかね?

*****

 さて、50年記念、50作目である最新作、『男はつらいよ お帰り 寅さん』を公開から1年後、WOWOWで見ました。何故劇場で見なかったかというと特殊な作品ですからね、評価が定まってないし、WOWOW放送まで待つことにしたわけです。

 いやあ、良かったね。ファンなら感涙もの。シリーズを知らない人でもしっかり鑑賞に堪えられる出来だと思う。
 まあ欠点はあるな。先に欠点をあげつらいましょう。

 ・泉の父親・一男を演じる役者が寺尾聰ではなく、橋爪功であること。
 これはねえ、皆さんおっしゃいますが、「くるまや一家(諏訪家)」と対を成す「及川家」の演者を変えてはいかんだろうということ。
 寺尾聰にオファーを断られたのか、近年、山田作品の常連である橋爪功あってのことなのか、製作の裏側は存じませんが、このことはこの作品の一番の欠点ですね。橋爪功は上手くやってましたが・・。

 ・泉の母、原礼子(夏木マリ)が、満男のことを、「寅さんの甥御さんでしょ?」であっさり済ませちゃうこと。
 まあねえ、シリーズは渥美清が亡くなった1995年でブチ切れてますから、泉の母と満男の関係性は、泉の母が満男の母親(さくら)にクレームの電話を入れたままで宙ぶらりん。25年前のこととは言え、「寅さんの甥御さんでしょ?」であっさり済ませちゃう関係じゃないですよ。泉の結婚式を暴力的にぶち壊したのは満男ですから。その後を描くチャンスが無かったからにせよ、満男に対して泉の母は複雑な心境があったはず。

 ・出川と志らくのゲスト出演の意味が全く無いこと。これはこれ以上でも以下でもない。

 ・満男と泉の職業が不自然という指摘が多くありますが、まあ有り得なくもないので良しとしましょう。

 ・桑田佳祐のオープニングの歌は、Yahoo!映評などで欠点と指摘されますが、筆者は欠点とは思いません。これはこれでいいと思う。

 まあ、こんなところですよ、欠点は。
 そして良いところをあげつらったらキリがありませんので、細々と申しませんが、いち作品として特に技術的なところで唸らせる事を挙げておきましょう。

 ・いち作品として成立してること。
 シリーズのダイジェスト版ではなく、「お帰り 寅さん」として、話に筋が通ってること。その話の筋に違和感なく「寅さんの話」が出てきて(過去のフィルム)、それが大筋の中に入り込んでいること。

 ・編集・音声の妙
 寅さんのシーン(過去のフィルム)に現在のカットを細かくインサート(挿入)してること。これは、回願シーンでも現在進行形の現在のシーンに取り込まれ、過去のシーンがダイジェストであるような印象にはならない。
 具体的には、リリーが寅さんの言葉として「冗談なんだろ?」と言う。その音声(現在のリリーの声)に被さる映像は過去の寅さんの顔だ。過去のフィルムをそのまま使っているわけではない。

 ・空港の別れ
 これは話として泣けるよ。満男シリーズの大団円ですね。30年以上の重み。

 ・ラストクレジット
 満男の涙に過去のマドンナが時間を遡って勢ぞろい。寅の啖呵売が始まって音楽が盛り上がり出演者名・渥美清の名が出る・・。そのタイミングと言うか、泣かせます。これも編集の妙ですね。

 まあこのくらいにしときましょう。
 寅さん映画食わず嫌いという人に何人か会ったことがあります。シリーズねえ、必ずしも全作良いかというとそうでもないです、ザっと下記のような感じ。

 ・傑作  15本
 ・秀作  15本
 ・佳作  13本
 ・残念作  7本

 残念作に当たったら、「そりゃ残念でした」しか言いようがないけど、傑作挙げときますか。
 ・全期に渡って、リリー(浅丘ルリ子)シリーズ、4本。
 ・初期はけっこう傑作ぞろい。歌子(吉永小百合)シリーズ、2本。
 ・中期は、『浪花の恋の寅次郎(1981)』、『寅次郎あじさいの恋(1982)』、『寅次郎真実一路(1984)』、『知床慕情(1987)』
 ・後期は、秀作含め、満男シリーズ。『寅次郎の縁談(1993)』、『拝啓車寅次郎様(1994)』、『寅次郎紅の花(1995)』

 寅さんシリーズ、まるで初めてという人には、『寅次郎の縁談(1993)』あたりが後期の代表作としてよろしいかと個人的には思います。

●男はつらいよ お帰り 寅さん

his

kage

2021/01/02 (Sat)

 his

 ほぼ1年前に公開された映画『his』をwowowで見る。良かったね。さほど話題になった映画だったとは思えないので、あらすじを「yahoo!映画」から抜粋しておきましょう。

*****ここから
ゲイだと思われるのが嫌でひっそりと生活している井川迅(宮沢氷魚)の前に、別れた恋人の日比野渚(藤原季節)が6歳の娘・空を連れて現れる。迅はしばらくここで住まわせてほしいと言う渚に戸惑うが、空は迅に懐き周囲の人々も三人を優しく見守るようになる。ある日渚は、娘の親権を妻と争っていることを明かし、長年抑えてきた迅への思いを告白する。
*****ここまで

 男性同性愛カップルの葛藤を結婚や法廷など社会問題や、地域との関係などを含め真正面から描いた作品。

 「ゲイの恋愛話」ということなら、いくつか挙げられる映画はありますが、社会問題をしっかり捉えた映画はこの作品が初めてですね、筆者(fanta)にとっては。

 元は名古屋のテレビ局の連続ドラマで、今作品(映画)は、TVドラマの13年後の設定とのこと。TVドラマも2019年4月5月放送で、まだ新しいモノです。TVドラマは見ていませんので、いきなり13年飛んで翌年映画化というのは作者(ドラマ、映画共、監督・今泉力哉、脚本・アサダアツシ)の意気込みが感じられます。

 TVドラマも見たい気がしますが、DVDは出てるのでレンタルでもされてるのでしょうか? 機会があれば見てみようと思います。

 この作品のyahoo!映評で特徴的なのは、総合点は4.13と傑作並みに高いのに、「お役立ち度」を見るとトップに低評価がズラズラ並ぶこと。

 まあ、低評価の言い分も分かりますわ。こちとらゲイですから、ゲイに味方するような話は見ていて気分がいいですが、これ、オンナの立場になったら、こんなひどい話は無いと思いますよ。だってゲイなのに結婚して子供作って、子供取ってオトコのところに駆け込んじゃうんだから、さらに裁判で子供の親権も取ろうとする。オンナが悪者扱いになってる。そういえば、ゲイカップルの子育てまで話を突っ込んだ作品も初めてですね。

 wowow放送での今作品の放送枠「W座からの招待状」の対談解説者が、「(地域住民の理解も)そううまくいきますかね?」と言っていたが筆者(fanta)も同感。そこら辺、今作品、都合の良すぎる描き方をしている。

 ゲイにとっては感動作ですが、万人受けする作品ではないでしょうね。こっちの立場に立って見て貰わないと。


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